新人の頃、私はこう思っていました。
「速い人ほど危ないんじゃないか。」
急げば確認がおろそかになる。
ミスも増える。
だから、安全と速さは反比例するものだと思っていたのです。
確認はゆっくり、作業はテキパキ
ところが、現場でベテランドライバーの仕事を見ていると、その考えは少しずつ変わっていきました。
ある日、先輩からこんな言葉を教わりました。
「確認はゆっくり、作業はテキパキ。」
最初は意味が分かりませんでした。
ゆっくりなのか。
テキパキなのか。
どっちなんだろう、と。
でも、仕事を覚えていくうちに、その言葉の意味が少しずつ見えてきました。
安全確認は、時間をかけます。
指差し確認。
バルブの確認。
ホースの接続確認。
ここは一つでも飛ばしてはいけません。
急ぐ場所ではないからです。
一方で、ホースを運んだり、道具を並べたり、片付けたりする作業は違います。
ここには、いくらでも改善の余地があります。
例えば、ホースをボックスから降ろすとき。
昔の私は、とりあえず持ち上げていました。
でも今は違います。
右手でどちらの口を持つのか。
左手はどこを支えるのか。
降ろしたあと、どちらの向きならそのまま伸ばせるのか。
そこまで考えてから動きます。
すると持ち替える回数が減ります。
余計な一歩も減ります。
ほんの数秒の違いです。
でも、それを毎日何十回も繰り返せば、大きな時間になります。
面白いのは、片付けるときです。
出す順番が決まれば、
しまう順番も自然と決まってきます。
すると、
「ここはもっと無駄を減らせる。」
という改善点まで見えてくるようになります。
つまり、手順が決まるからこそ、改善が始まるのです。
私は以前、ベテランドライバーは急いでいるから速いのだと思っていました。
でも違いました。
急いでいるように見えていただけでした。
実際には、確認は誰よりも丁寧です。
作業だけが驚くほどスムーズなのです。
言い換えれば、
急いでいるのではなく、迷っていない。
だから速い。
最近は私も、少しずつ同じことを考えるようになりました。
「どうすれば楽になるか。」
ではありません。
「どうすれば安全を変えずに、一つ動きを減らせるか。」
そんなことばかり考えています。
すると、不思議なことに、安全確認にかける時間は変わらないのに、作業時間だけが少しずつ短くなってきました。
今では、あの時の先輩の言葉がよく分かります。
「確認はゆっくり、作業はテキパキ。」
速さとは、急ぐことではありません。
安全を守りながら、無駄を一つずつ減らしていくこと。
ベテランドライバーの本当の速さは、そこにあるのだと思います。
引っ張りオヤジのトレーラー転職日記 