トレーラーの運転に必要なこの免許。名前は知っていたが、実際にどのような運転をするのか、どれほど難しいのかは全く想像できなかった。
ただ一つ分かっていたのは、この免許を取得しなければ、私が目指すタンクローリートレーラー乗務員にはなれないということだった。
50代で新たな挑戦
正直なところ、不安は大きかった。
大型免許を取得した時ですら、「この歳で教習所に通うことになるとは思わなかった」と感じていたのだから、その先にある牽引免許ともなればなおさらである。
教習所の待合室には若い人もいれば、現役のトラックドライバーらしき人もいた。
私はというと、50代半ばでの転職を目指している身。
「本当に自分にできるのだろうか」
そんな気持ちが頭をよぎった。
しかし、ここまで来て引き下がるわけにはいかない。
人生後半の挑戦を自分自身で諦めるわけにはいかなかった。
初めて乗った牽引車
教習初日。
教官から車両の説明を受け、いよいよ運転席へ乗り込む。
見た目は大型トラックに近いが、後ろにはトレーラーが連結されている。
バックミラーを見ると、長い車体が後方へ伸びている。
「なるほど、これを動かすのか……。」
期待と緊張が入り混じる。
まずは前進走行。
意外なことに前進はそれほど難しくなかった。
もちろん内輪差や車両感覚は大型車以上に気を遣うが、普通に走るだけなら何とかなる。
問題はその後だった。
地獄のバック練習
教官から言われた。
「牽引免許はバックが全てです。」
まさにその通りだった。
後退を始めた瞬間、頭の中が混乱する。
普通の車や大型トラックとは動きが全く違う。
少しハンドルを切ると、トレーラーが予想外の方向へ動き出す。
修正しようとすると、さらに曲がる。
慌てる。
また曲がる。
気付けばトレーラーは大きく折れ曲がっている。
教官からは、
「はい、前に出してやり直しましょう。」
その言葉を何度聞いたことだろう。
正直、教習初日は心が折れかけた。
大型免許の時には感じなかった難しさだった。
失敗の連続
教習期間中は失敗の連続だった。
方向転換では枠に入らない。
切り返しのタイミングが遅い。
ミラーを見ているつもりでも車体の動きを読み切れない。
仕事なら間違いなく事故になる。
そう思うと恐ろしくなった。
それでも教官は言った。
「最初からできる人なんていません。」
実際、牽引免許は感覚を身につける免許だと言われる。
理屈だけではなく、何度も操作を繰り返して体で覚えるしかない。
若い頃のように一度で覚えることはできない。
だからこそ、一回一回の教習を大切にした。
見えてきたコツ
何時間か教習を重ねた頃、不思議と車両の動きが少しずつ見えてきた。
バックする際、
「このくらい切ればこう曲がる」
という感覚が分かるようになったのである。
もちろん完璧ではない。
それでも初日の絶望感に比べれば大きな進歩だった。
何歳になっても人は成長できる。
そのことを実感した瞬間でもあった。
卒業検定当日
検定の日は朝から緊張していた。
ここで不合格になれば再試験。
時間も費用も余計にかかる。
何より、自分自身に負けたような気持ちになりそうだった。
コースを走りながら深呼吸を繰り返す。
そして最大の山場である方向転換へ。
ミラーを確認しながら慎重に後退する。
焦らない。
慌てない。
教習中に教官から言われ続けた言葉を思い出す。
気付けば車両はきれいに枠へ収まっていた。
検定終了後、合格を告げられた瞬間の安堵感は今でも忘れられない。
あとがき
若い頃なら、もっと簡単に取得できたかもしれない。
しかし50代になった今だからこそ、一つの資格を手にする重みや喜びを強く感じる。
もし年齢を理由に挑戦をためらっている人がいるなら伝えたい。
挑戦に遅すぎるということはない。
私自身、50代で牽引免許を取得できた。
人生は何歳からでも新しいスタートを切ることができる。

